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「NEW NEW DAY」とは?
2021.13.03 Sat 11:26
「NEW NEW DAY」とは、平成23年(2011)に開催された太宰府天満宮アートプログラムvol.6 ライアン・ガンダー「You have my word」で発表された新作7点のうち、太宰府天満宮独自の新しい記念日を作ろうというガンダーの呼びかけにより、展開されたプロジェクト「The ‘thinking’ art enthusiast’s national treasure/「考える」熱烈な美術愛好者のための国宝, 2011」の中で、命名された記念日の名前です。
記念日は、太宰府天満宮の職員が選定し、3月16日に決まりました。昭和46年(1971)3月16日、太宰府天満宮は、国立博物館を太宰府に誘致するため、福岡県に用地を寄附しました。国博誘致は代々の宮司の悲願で、100年の時を経て平成17年(2005)10月についに開館しました。代はかわっても、大切な思いは脈々と受け継がれ、夢を実現するために大きな一歩を踏み出したのがこの3月16日です。
そして、ガンダーによって提案された新たな記念日の名前は「NEW NEW DAY」。ガンダー曰く、「身の回りの見慣れたものを白一色に塗りつぶす、というのがNEW NEW DAYに想定される儀式」ですが、花嫁の白無垢、清め塩など白色が象徴する清浄無垢な状態に戻って、もう一度、自分にとって本当に大切なもの、未来に伝えていくべき何かを考える、というのがコンセプトです。また、本作に直接影響を与えたのは「大祓(おおはらえ)」神事などの神道思想と言えます。数回にわたる太宰府天満宮への来訪を通して、ガンダーにとって新鮮に映った異文化の思想と、彼が本来持っている能動的な人生観、すなわち既存のカレンダーによるのではなく、自分自身の設定したそれによって生きる姿勢とが交差して、本プロジェクトは誕生しました。
また、本プロジェクトは異邦人としてのガンダーが日本文化に注ぐ直感的かつ真摯な好奇心が特徴的であり、具体的には地元のデザイン学校と連携しての告知ポスターや、キャラクターARATAちゃんのデザイン、ARATAちゃんのキーホルダー制作という形に展開を見せました。
さらに、記念日発足の翌年から毎年、「NEW NEW DAY」をお祝いするためにガンダーのコンセプトによるカードを送っています。
NEW NEW DAY Cards ©Ryan Gander, 2012-2021, Courtesy of TARO NASU
Photograph: Julian Abrams
ライアン・ガンダー Ryan Gander
1976年イギリス生まれ。ロンドン・サフォークで活動。コンセプチュアル・アートの旗手として世界のアートシーンで注目を集める。「墜ちるイカロスー失われた展覧会」(メゾンエルメス,東京,2011)、「Make every show like it's your last」(ヨーロッパ・アメリカ巡回,2013-16)、「ライアン・ガンダー-この翼は飛ぶためのものではない」(国立国際美術館,大阪,2017)、「われらの時代のサイン」(東京オペラシティアートギャラリー,2022)など個展多数。「第54回ヴェニス・ビエンナーレ」(イタリア,2011)、「Our Magic Hour」(横浜トリエンナーレ,神奈川,2011)、「ドクメンタ13」(ドイツ,2012)「Ouverture」(ブルス・ドゥ・コメルス,フランス,2021)など国際展に多数参加。