菊畑茂久馬展

Date
2022年3月19日 - 2022年5月08日
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太宰府天満宮宝物殿では、生涯に亘り福岡を拠点に活動を続け、戦後日本の美術史に大きな足跡を残した画家 菊畑茂久馬(きくはた もくま1935-2020)の絵画を紹介しました。
徳島県出身の漁師であった父と、長崎県五島出身の母との間に長崎で生まれた菊畑は、3歳で父を亡くし、終戦間際の1944年、福岡市で働く母のもとに移りますが、その母も15歳で亡くします。天涯孤独となった菊畑は、好きな絵画にのめり込んでゆき、1957年には、反芸術を掲げた前衛美術集団「九州派」のメンバーとして頭角を表します。
高度経済成長期にあって、芸術に大量の資金が投入されることに違和感を覚えた菊畑は、大阪万博を目前にした60年代後半から、80年代初頭まで作品発表から退きます。その間アメリカから返還された戦争記録画、後にユネスコの世界記憶遺産に登録された山本作兵衛の炭坑記録画を徹底的に検証し、画家の有り方を模索し続けました。およそ20年の沈黙を破り、唯一無二の「天動説」シリーズで再び第一線に戻った菊畑は、次々と200号の大作シリーズを発表します。
本展では、2020年に菊畑が亡くなって以来、アトリエに大切に保管されていた作品のうち、「天動説」から「春風」まで、9点をご遺族の全面的ご協力によりご紹介しました。
彼の原風景とも言える幼少期に五島で見た海と空を彷彿とさせる美しくも深遠な青の画面から発せられる熱量を間近で感じる展観となりました。

令和4年(2022)3月19日(土)~5月8日(日)
※3/21・4/25・5/2を除く月曜休館
開館時間:9時~16時30分(入館は16時まで)
会場:太宰府天満宮宝物殿 企画展示室 〒818-0117 福岡県太宰府市宰府4-7-1
観覧料:一般500(400)円・高大生200(100)円・小中生100(50)円
※( )内は30名以上の団体料金、障害者手帳提示により付添者1名まで半額料金
主催:太宰府天満宮

菊畑茂久馬 略歴
昭和10年(1935)長崎市に生まれる
昭和19年(1944)福岡市に移る
昭和32年(1957)前衛美術グループ「九州派」に参加、前衛美術のホープと注目されるが、60年代後半より、美術界から遠ざかる
昭和39年(1964)ルポルタージュ文学作家 上野英信の紹介で筑豊の炭鉱画家・山本作兵衛の作品を知り、作兵衛の作品を「美術」として評価する
昭和45年(1970)アメリカから返還された戦争記録画について論考を執筆
昭和58年(1983)絵画作品「天動説」シリーズを発表、19年ぶりに画壇に復帰、以降「月光」、「舟歌」などの大作を次々に発表
平成10年(1998)建築デザイン監修で携わった「岩田屋Z・SIDE(現・岩田屋本店本館)」が福岡市都市景観賞を受賞
令和2年(2020)5月21日、85歳で逝去

出品作品
天動説 No.116 1985年 油彩・画布 162.5×130.3
月光 七 1986年 油彩・画布 162.2×130.3
月光 十一 1988年(加筆1989年/2001年)油彩・画布 259.5×194.5
海道 六 1990年(改作1997年)油彩・画布 259.0×194.0
海 一〇四 1990年(加筆1993年)油彩・画布 117.0×80.5
舟歌 十四 1993年 油彩・画布 259.0×194.0
天河 八(2点組)1997年(加筆2001年)油彩・画布 194.0×162.0×2
春風 一〇三 2006年 油彩・画布 72.7×116.7
春風 十 2011年(加筆2015年)油彩・画布 162.0×130.5