中村人形と太宰府天満宮

Date
2021年9月18日 - 2022年3月13日
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太宰府天満宮宝物殿では、創業大正6年(1917)の老舗中村人形四代の人形師に焦点を当てる企画展「中村人形と太宰府天満宮」を開催しました。
初代 筑阿弥(1897-1947)が博多人形を生業としてはじめた中村人形は、衍涯(1921-1992)、信喬(1957-)、弘峰(1986-)へと脈々と受け継がれてきました。博多人形は、慶長5年(1600)の黒田長政の筑前入国に伴い、集められた陶工たちが生み出したのが原点と伝わります。素焼きに着彩という大原則の他は作り手に委ねられるというその大らかな土壌は、確かな技術と精神を受け継ぎ、時代とともに変化することを是とする中村人形の理念を醸成してきたのです。さらに、近年創作の場は国内外に広がり、その型に収まらない人形のありように熱い視線が注がれています。
当宮では、境内の樟を材料に信喬氏に依頼した御神牛像をはじめ、信喬・弘峰親子による作品を収蔵してきました。さらに、平成15年(2003)からは、干支の土鈴などの正月の縁起物を中村人形に手掛けていただいています。伝統工芸の世界に身を置きながら、作品を通して、古来変わらない人の祈りに時代の今を見出そうとする中村人形に通底する姿勢を前期、後期に分け、バラエティー豊かな内容でご紹介しました。
また、後期前半は、信喬氏による博多人形「エヴァンゲリオン」を、後半には、中村ふく(喬華)氏による書「中村家家訓」を特別に公開しました。

中村信喬「菅公天に祈る」陶彫彩色 令和3年
前期展示の様子
中村弘峰「花守」陶彫彩色 令和3年
後期展示の様子

 

中村ふく(喬華)「中村家家訓」墨・和紙 令和3年
中村信喬「エヴァンゲリオン」陶彫彩色 令和3年 株式会社Zero-Ten蔵 ©カラー

展覧会概要
タイトル:中村人形と太宰府天満宮
前期:令和3年(2021)9月18日(土)~12月7日(火)
後期:12月11日(土)~令和4年(2022)3月13日(日)
※9月20日、10月25日、1月3日、10日を除く月曜休館
開館時間:9時~16時30分(入館は16時まで)
会場:太宰府天満宮宝物殿 第2・企画展示室 〒818-0117 福岡県太宰府市宰府4-7-1
観覧料:一般500(400)円・高大生200(100)円・小中生100(50)円
※( )内は30名以上の団体料金、障害者手帳提示により付添者1名まで半額料金
主催:太宰府天満宮
協力:RKB毎日放送
撮影:マツモトカズオ

関連イベント①
「中村人形と太宰府天満宮」ポップアップ展示
太宰府天満宮から「中村人形と太宰府天満宮」展のオリジナルグッズが福岡市内2ヵ所に飛び出しました。
第1会場のTAG STÅでは、中村人形四代目弘峰さん作の人形(販売有)の他、2年前に太宰府天満宮境内に完成したローレンス・ウィナーの作品「ひとつの中心のその中心」の関連グッズ(販売有)、ウィナーのドローイングも展示しました。

「中村人形と太宰府天満宮」展オリジナルグッズ
《中村弘峰×三重野龍》 弘峰さんの作風にちなみ、当宮 意匠課の発案で、京都在住のグラフィックデザイナー三重野龍さんと中村人形のコラボレーションが実現しました。弘峰さんの作品『黄金時代』に「人形」の文字が絡められたTシャツ、コーチジャケットと「人形」の文字の造形に注目したキャップを数量限定で制作しました(一部宝物殿ミュージアムショップで販売中)。
*太宰府天満宮には、デザイナーの前田景さん、三迫太郎さん、河村美季さんが所属する意匠課があり、境内の様々なもの・ことをデザインしています。

会場① TAG STÅ 福岡市中央区春吉1-7-11
1月22日(土)~1月30日(日) 7:00~20:00
中村弘峰×三重野龍トーク 1月22日(土)17:00~
進行役 三声舎 三好剛平 / 予約不要
参加無料(要1ドリンクオーダー)

会場② manucoffee roasters クジラ店 福岡市中央区白金1-18-28
2月1日(火)~2月15日(火) 10:00~19:00
※人形の展示・販売はありません

関連イベント②
「中村人形と太宰府天満宮」スペシャルトーク -文化がつなぐ 親ごころと子ごころ-

中村人形四代目 弘峰さんがプロデューサーをつとめるFACT(Fukuoka Art Culture Talk)と共催のトークイベントを開催しました。

日時:令和4年2月26日(土)14:00~ 参加無料・要申込
※余香殿50名/オンライン100名限定
会場:太宰府天満宮余香殿(社務所2階)
主催:太宰府天満宮 共催:FACT
登壇者:
太宰府天満宮第三十九代宮司 現・最高顧問 西高辻信良
太宰府天満宮第四十代宮司 西高辻信宏
中村人形三代目 中村信喬
中村人形四代目 中村弘峰
進行役 工藝風向店主 髙木崇雄
進行役 デザインジャーナリスト 高橋美礼

近年、国籍やジャンルを越えて多様なアーティストを招聘し、気鋭のアートプログラムを進めてきた、太宰府天満宮の御祭神 菅原道真公の子孫、西高辻信良・信宏親子。「お粥食ってもいいもん作れ」を代々の戒めとして、時代に応じた人形の姿を示し続けてきた中村人形の中村信喬・弘峰親子。多くの人々が集い、思いを込めて手を合わせる場としての神社、幼子の健やかな成長という望みを託す人形。共に人々の「祈り」を受け止める仕事を担ってきた両家、二組の親子が、各々の仕事・親子関係を「育て、受け継ぐ」ことの喜び、難しさ、これからについて忌憚なく語りあいました。「今」を生きる作家を育て、育ってゆくことこそが、次世代の宝物(ほうもつ)コレクションへと結ばれてゆく。今回の対話が、50年・100年後を見据えた神社の使命、人形師の役割を捉えなおす機会となることを願って開催しました。

FACT(Fukuoka Art Culture Talk)とは、これからの福岡にとってきっと必要になる多様な文化について、学び、考え、語り、つなぐことを目的とした文化的有志団体です。